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gakugei_today

建築・まちづくり・コミュニティデザインの学芸出版社です。最新情報をお届けします。

森重昌之さん『観光の地域ブランディング』を語る

観光まちづくりへの取り組みに問題を感じている人たちに、持続可能な観光の具体的なモデルを示したかったと語られました(2011年4月28日収録)。
聞き手:前田裕資(編集部)

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/031mori/index.htm

森重昌之さん
阪南大学国際観光学部国際観光学科専任講師。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院観光創造専攻博士後期課程/株式会社計画情報研究所を経て現職、著書に『地域からのエコツーリズム−観光・交流による持続可能な地域づくり』(共編著)学芸出版社、2009年

■持続可能な観光の具体的なモデルを示したかった

前田:

 『観光の地域ブランディング』をお出し頂いた森重先生に、この本の狙いとどういう方に読んでもらいたいかをお聞きします。

森重:

 この『観光の地域ブランディング』の中で、「関係性モデル」というものを提示しております。これは、地域にある資源をどういう風に生かしていくか、単に資源を生かすだけでなく、資源をどういうふうに地域の人々に伝えていくか(つまり、ブランディングからマーケティングへということです)、最終的にはそれで観光客に来ていただくということを提示しました。

 通常の観光では、お客さんが来て収入が増えたということで満足することが多いのですが、この本ではそれだけでなく、増えた収入がどういうふうに地域に還元されるかということまで考えました。地域社会に還元されることで地域資源の価値が高まり、さらに地域そのものの価値も高まっていくという、ひとつの循環をするモデルを本の中で描いています。

 関係性モデルの中でぐるぐると循環していくことが、今、観光の分野で考えられている「持続可能な観光」とか「サステイナブルツーリズム」の方向を示す一つではないかと思います。そういう意味で、サステイナブルツーリズムの具体的なモデルをこの本の中で示すことが出来たと思っています。

■取り組みに問題を感じている人に読んで欲しい

 この本をいろんな方に読んで頂きたいと思っていますが、一つはサステイナブルツーリズムや観光まちづくり、着地型観光を実際に経験されている方や、これから始めようと考えている方に読んでいただきたいと思っています。特に、今、観光に取り組んでいるけれどもうまく進まないと考えていらっしゃる方には、それぞれのプロセスのどこで停滞しているかを考えるときに、この本は非常に参考になるだろうと思います。大事なことは、必ずしも地域資源を作るところから始めなくてもいいということです。どこからでも、持続可能な観光は始められることが特徴です。

 この本の中では海外も含めた8つの事例を紹介しています。その中には、地域にある資源に磨きをかけてブランド化して売っていく事例もあれば、地域の人は気づいてないけれど、地域の外にいる人たちがこれはいいねと評価したことから始まった持続可能な観光も紹介されています。ですから、どの部分からでも始められるのです。観光のプロじゃない人でも始められる、誰でも始められるのが、着地型観光であり持続可能な観光の面白いところであり、メリットです。そういう意味では、観光のプロ以外のいろんな方に読んでいただければと思っています。

標津町での経験

前田:

 この中で、想い出のある事例はございますか。

森重:

 私自身は、北海道の標津町という道東にある町の事例が面白かったと思っています。ここは秋鮭が採れる産地なのですが、本来鮭は漁業者にとって大事な資源ではあるけれど、地域の人にとってはそれほど関わりのあるものではなかった。しかし、観光を通じて酪農家や役場に勤めている人、普通に町で暮らしている人たちも、鮭が地域の大事な資源だと認識できるようになりました。

 それは外からの目線でそういう認識ができるようになったんです。もちろん、それまでも鮭が地元の資源だとはわかっていたんですが、観光を通じて町にやってきた人たちが「いいね」「素晴らしい」と誉めてくれたことで、地元の人達がより自慢に感じたり、誇りを感じたりするようになったんです。町の人たちがそういうふうに感じることで、観光もより進化するようになりました。観光が進化するとは、単に観光がうまくいって収入も増えましたねということじゃなくて、その地域に暮らすこと自体が誇りあることだと感じたり、生活することで豊かさを感じたりするようになることです。その変化が如実に感じられたという点で、標津町の事例は面白いと思います。

 もちろん、こんなふうに観光が進化することで人びとが豊かさを感じるようになった例は標津に限らず、8つの事例それぞれに見られる共通した出来事です。他の地域で活動されている皆さんも、このモデルを見て同じように感じられるのではないかと考えています。

前田:

 ありがとうございました。

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