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gakugei_today

建築・まちづくり・コミュニティデザインの学芸出版社です。最新情報をお届けします。

「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk「#1文山達昭と「いま都市」な人々」イベントレポートをUPしました!

イベントレポート 編集部より

◎「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk
#1文山達昭と「いま都市」な人々

イベントレポート
http://gmark.jp/event/1204ima/report01.htm
『いま、都市をつくる仕事 未来を拓くもうひとつの関わり方』
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1293-4.htm

(ゲスト)
文山達昭(京都市都市計画局)
魚谷繁礼(魚谷繁礼建築研究所
梶隼平(京都大学大学院修士課程)
鄭英柱(尼崎市都市整備局)

 都市・建築の思想を学び,建築設計の仕事を経て,現在,京都市役所で都市計画に携わっている文山達昭氏と3名の都市に関わる人々のトークセッションというかたちで行われた第1回目のクロストーク. 

  1人目の対談相手は,京都で建築設計事務所をされている魚谷さん.建築単体のデザインだけではなく,その先にある「都市の構造」に目を向ける魚谷さんと,行政としてまちのルールづくりに携わる文山さんとの2つの視点で,長い目でみた都市をどう考えていくか,議論を交わし合いました.2人目の京都大学大学院の梶さんとは,いま改めて都市とは何かを問い直すことをテーマとした梶さんの修士論文を軸に,都市を語る際に必要な「思想」について語り合ってもらいました.3人目は尼崎市の都市計画局で働かれている鄭さんです.行政といえども,京都と尼崎という二つの地域で全く異なる意識や価値観をもつことや,行政が負うべき責任についての意見交換となり,3部構成の内容は多岐に渡り,大いに盛り上がりました.   

 最後は車座になり参加者全員で自由に語り合う場に.設計をされている参加者の方から,行政と設計者が理解を深める機会が欲しいという意見や,行政の方から,一人ひとりの住民の思いを集めた道路計画と都市計画上の理想的な道路計画との差を感じた体験談など,現場で働かれている方のさまざまな声が上がり,活発な議論の場となりました. 

◎参加者のレポート

 今回のクロストークでは,行政マン,大学教員,コンサル,設計者,学生と,本当に多種多様な方々が参加されていました.それぞれの立場の方がそれぞれの場所で,都市という大きな見えないものに対する畏怖や戸惑いを持っていて,厳しい言葉もたくさん飛び交いました.それでも一度も険悪なムードにならず終止和やかだったのは,それぞれが持つ都市への「愛着」を理解し,お互いの意見を真剣に受け止め,新しい何かに近づきたいという意志だけはしっかり共有できていたからだと感じました.

 「一般市民の多くは,まちや都市計画に無関心」という尼崎市職員の鄭さんの苦い言葉に会場が沸きました.私もその大多数の市民になるはずが,大学で建築設計の課題に取り組み,新しいものを生み出すときには必ず代償として犠牲となるものや変わってしまう風景があり,建築は単体として存在しないことを考えざるをえなくなりました.その経験からも興味深かったのは最初の魚谷さんと文山さんの対談です.

 お二人はこれらの制約さえも味方にしてしまい,自らのフィールドに引き込んで都市を創造しようという立場で共通の視点を持っていて,既存のルールを常に疑う姿勢を持っておられました.一時の個人の利害に拠らず,長い目でみた都市を考えるときにどうしても必要になるのがルールであり,一方でルールからこぼれ出るところがいちばん大切という文山さんの言葉が印象的でした.都市をつくる側の少数派として考えれば,建築家と行政の距離はそれほど遠いものではないと思わせてくれる対談でした.

 2人目の梶さんは,自身の修士論文をもとに,都市を根本的に見つめなおすために必要なのが「思想」であるというテーマで話されました.対談の最後,4月から,設計組織で働かれる梶さんに向けて,文山さんが「常に揺れている存在でいること」が大切だとアドバイスされていました.「思想」を持ち続けることが難しい実社会に出て行く学生に向けた,「そういう人間がそういう場所にいることが大切だ」という言葉には,会場中が共感していたように思います.

 3人目の鄭さんの「両方正義」という言葉は,この回の論点を集約したような言葉でした.鄭さんの言葉は,長年行政という立場でまちに関わってきたからこそ言える,より実情に即した市民目線の意見が多いように感じました.

 参加者の議論で出てきた現場の方の言葉は一言一言が重く,とても実感のこもったものでした.それが新鮮であったのと同時に,都市をつくる立場の人間でさえ「コミュニケーション不足」であることを痛感しました.都市に生きる様々な立場の人たちが,唯一解ではなく最適解を探って意見を交わし合う場を持つことこそが,あの場に居合わせた方々にとっての現段階での最適解なのだと思います.このような意見交換ができる場が,都市の使い手である市民も交えて,これからももっと広く行われていって欲しいです.

岩切江津子(編集部)

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