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建築・まちづくり・コミュニティデザインの学芸出版社です。最新情報をお届けします。

「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk #2「まち飯」の面々−いま、都市をつくる仕事に、もの申す。

イベントレポート 編集部より

「都市をつくる仕事」の未来に迫る Crosstalk
#2「まち飯」の面々−いま、都市をつくる仕事に、もの申す。

http://gmark.jp/event/1204ima2/report02.htm

(ゲスト)
まち飯 3名

いま都市 3名

  • 穂苅耕介(京都大学大学院)
  • 塩山沙弥香(財・兵庫丹波の森協会)
  • 依藤智子(株・総合計画機構)

◎まち飯×いま都市

“「まち飯」の面々 - いま、都市をつくる仕事に、もの申す。”と題して開催された第2回目のクロストーク。ゲストは京都でまちづくりに携わっておられる若手グループ、「次代のまちを考える会」(通称:まち飯)から谷さん、深川さん、江藤さんに来ていただきました。まち飯の皆さんは普段から、「いかにまちづくりで飯を喰うのか?」をテーマに勉強会や講演会をされています。彼らに“もの申された”のは『いま、都市をつくる仕事』という本をつくりあげた、「日本都市計画学会関西支部・次世代の「都市をつくる仕事」研究会」(通称:いま都市)の、穂苅さん、塩山さん、依藤さんです。まち飯の皆さんと同じく、関西でまちづくりに関わっておられます。


まち飯  (左から)深川さん、江藤さん、谷さん
いま都市  穂苅さん、依藤さん、塩山さん

プロレスの入場テーマと共に登場したまち飯メンバーのテンションの高さに引っ張られて、会場もすぐに盛り上がり、初めのうちは和気あいあいといった雰囲気で議論がスタートしました。しかし議論は序盤から多くの参加者が活発に議論を交わし合い、今回登壇した6人にとどまらず会場中に意見が飛び交うとても活気溢れるものに。気づけば終了予定時刻を30分オーバーしても収束しないほどに白熱しました。

今回まち飯の皆さんがいま都市のメンバーに投げかけたテーマは「いま都市は、次の都市をつくれるのか?」というもの。わたしはこの掴み所のないテーマに最初からつまずいてしまい、前半は内容を理解し、議論についていくのに必死でした。しかし後半、話が進むにつれてようやく議論の主旨がわかってきました。それはやはり、まち飯最大のテーマである「まちづくりで飯が喰えるのか」でした。

◎「都市をつくる仕事」とはどう定義され、どこで線引きされるべきなのか

前半はまず、思考実験として八百屋さんを例に挙げ、「都市をつくる仕事」の定義について議論することに。野菜を売るというのが八百屋さんの本来の仕事ですが、例えばAさんは八百屋として働きつつ、趣味や副業として陰ながらまちづくりに携わる。いっぽうBさんは、地域の人たちに無農薬野菜の勉強会や料理方法を提供したりする新しい八百屋として、八百屋という本職自体をまちづくりの実践の場にする。では「都市をつくる仕事」に当てはまるのはどちらなのか。一方だけなのか、それとも両方なのか?そもそもこの議論以前に、昔の八百屋の頑固親父は“まちづくり”なんて言葉を出さなくても、いい野菜を売り、地域のための場をつくり、まちに貢献していた。今だってこの頑固親父のように自覚がなくても都市に貢献している人もたくさんいるはずだが、そういう人たちは「都市をつくる仕事」に当てはまるのか?

医者や弁護士のように資格が必要なわけではなく、ミュージシャンや画家のように自らが名乗ることで確立される地位もない、わかりやすいロールモデルがないのが、「都市をつくる仕事」。それが一体何なのか、だれも明確に定義できないでいることにもやもやしているのは、まち飯の3人だけではないと思います。さらには「仕事」「都市計画」「まちづくり」といった議論に出てくる様々な言葉自体も、あまりに広義な意味をもつ言葉であり、個々で食い違う言葉の定義がますます話を複雑にし、議論は空中戦に。

◎自分が八百屋になりたいか

しかし後半になって、ようやく話が見えてきました。宙に浮いていた議論はしだいに、プレイヤーとしての八百屋、それを支援する立場としてのコンサル・行政という、2つの立場に焦点をあてたものに着地しはじめました。議論が核心に迫るきっかけとなったのは、自身がプレイヤーになりたくないと思っていることに“後ろめたさ”を感じるといったまち飯・江藤さんの言葉だったように思います。「地域の課題解決の手助けをしたいけど、自らが八百屋になりたくはない。でも八百屋になりたい人がたくさん生まれる仕組みをつくりたい。」その言葉から、「まちづくり」で喰えない“今の社会へのもどかしさ”が、まち飯の原動力となっているように感じました。

一方、いま都市のメンバーは『いま、都市をつくる仕事』に紹介されていたまちづくりの第一線で行動している人々、その“プレイヤーへの共感”が原動力であるという印象を受けました。“先が見えないからあきらめるのではなく、とにかくやってみる”というプレイヤーの体当たりな姿勢に強く共感した人間が集まり、より多くの人を巻き込んで活動の輪を広げていきたいというモチベーションが、そのまま一冊の本になったのだと思います。

「まち飯」と「いま都市」それぞれが見ている方向が少し違うために議論は平行線を辿り、結局八百屋の定義づけも、まちづくりで飯が喰えるのかも、次の都市はつくれるのかも、答えは出せず(出さず?)終いでしたが、今回、お互いが相手に対して抱いていた多くの問題意識を何とか共有し合って議論は幕を閉じたのかなと思います。

◎「自分発信」というこころもちが大事

今回のクロストークは、プレイヤーであること、支援者であることの意味について改めて深く考える良い機会となった気がします。議論の中盤に、「お互い同じ目的を持ちつつも全く異なる立場であるからこそ、両者が“自分発信で課題に向き合う”ことが大切」という意見がでました。プレイヤーは否が応でも「自分発信」ですが、支援者はそうではありません。「まちを面白くしたいと思っている自分ありきの発信」という健全な姿勢を忘れて、あの人が困っているから助けないといけない、というように、押し付けがましい誤った使命感を持つこともできてしまいます。だからこそ「自分がしたいことをしている」という自覚は、プレイヤーだけでなく支援者の側に大事な気持ちだと思いました。

個人的にはこのことを、先日参加したプラス・アーツの永田宏和さんの講演会で聞いた「作法」の話に繋げて考えました。「風の人、土の人、水の人、それぞれが作法をわきまえなくては、まちづくりは成功しない。」でしゃばりすぎず引っ込みすぎず、それぞれが自分の持ち回りを全うするだけで十分、余計な介入はかえって逆効果になってしまう、というこの話のように、それぞれが作法をわきまえていれば、まちづくりに関わる人同士が相手に対して、あるいは自分に対して後ろめたさを感じることなど無いのではないかなと思いました。

第2回目のクロストークは、参加者がたくさんの問題意識を共有できた回となりました。次回第3回は「都市・まちづくり学入門」を執筆された「新しい都市計画教程研究会」(通称:なる都市)委員長の近畿大学総合社会学部教授・久隆浩先生をはじめとする「なる都市」チームを迎えます。多くの人を巻き込んで盛り上がったクロストークもいよいよ次で最終回、今回共有された若手の問題意識が、「なる都市」の先生方にどんなかたちで消化させてもらえるのか、とても楽しみです。

岩切江津子

◎参加者のレポート

今回のクロストークのゲスト「まち飯」は「まちづくりで飯を食べていきたい!」という問題意識をもとに勉強会や、都市計画・まちづくりの実務家の講演会開催など、僕たち「いま都市」メンバーとの関心と近いところで活動されており、今回のこのコラボ企画は単なる議論を越えた、新しいネットワークづくりになったと思います。 まず、まち飯メンバーから、いま都市への申したてとして、①どこまでが、「いま、都市をつくる仕事」か? ②さらに、次の都市をつくる仕事とは? ③都市をつくる仕事を支える仕組みとは? の3点を提示され、それぞれについてパネリストだけでなく、会場全体を交えた熱い議論が交わされました。

①どこまでが、「いま、都市をつくる仕事」か?

最初は、まち飯メンバーが、どうやったら八百屋が「いま、都市をつくる仕事」の本に載せられるのかを事例として、都市をつくる仕事の境界線について議論しました。

  • アフターファイブでまちづくりをしている八百屋? 
  • 自分で育てた野菜を提供する八百屋? 
  • こだわり野菜を販売する八百屋? 

などなど、様々なシチュエーションの八百屋について想像をめぐらせていました。僕自身は八百屋の形態を中心にいろいろ考えていましたが、八百屋のオーナーが持つパブリックへの広がりや意志が「都市をつくる仕事」になり得るという、会場からの意見には大変納得ができました。これに続いて、「仕事」についても様々な議論がありました。会場に来られていた應典院の秋田住職は、「仕事には、ライスワーク(食うための仕事)と、ライフワーク(生き様としての仕事)の2種類に分けられる」というコメントは大変興味深かったです。また、いま都市の書評を執筆してもらった京都市景観・まちづくりセンターの杉崎さんからの、「仕事という言葉にとらわれるなという」コメントは、「いま都市」メンバーの共通認識を的確にくみとってもらえたと思います。確かに「仕事」というと、生活のためにお金を稼ぐことをイメージしがちですが、『いま都市』で対象としている「仕事」は、都市に対する生き様そのものであり、それが結果として対価を得ている人々だったのではないかと思います。「いま、都市をつくる八百屋」から始まった、都市をつくる仕事の境界線について議論では、仕事を通じてパブリックへ開けることの重要性や、生き様としての仕事の意味を考えるきっかけとなり、そうした意志をもって仕事に取り組んでいきたいと思い、仕事への前向きな気持ちをもって議論をしめくくることができました。

②さらに、次の都市をつくる仕事とは?

さらに、次の都市をつくる仕事について、会場から、いま都市メンバーの杉本さんが「都市をつくる仕事をつくる仕事(支援する仕事)」についての紹介を引き合いに、会場から様々な議論が展開されました。全体の議論を通して、「都市をつくる仕事をつくる仕事」への広がりや、「都市をつくる仕事をつくる仕事」への期待を感じることができました。
また、これまで担ってきたとされるコンサルタントの役割や職能像についても議論が広がっていきました。「いま都市をつくる仕事をつくる仕事」の担い手として、コンサルタントだけでなく、NPO、行政、市民活動団体等の他の様々なセクターを含めた議論についても進めていきたいと思いました。

③都市をつくる仕事を支える仕組みとは?

都市をつくる仕事を支える仕組みについて、「さらに、次の都市をつくる仕事とは?」での議論と同様に、コンサルタントの職能を事例に、活発な議論が交わされました。
コンサルタントで働かれているパネラーの江藤さんからの「このままではコンサルタントは飯を食っていけない!」というコメントに、同じコンサルタントで働く方々や、コンサルタントと一緒に仕事をしている人を中心に、たくさんの意見が出てきて、まさにこの業界ならではの切実な悩みを垣間見ることができました。その中の意見として、単に仕組みについて議論するだけでなく、プレイヤー的にやらないと説得力をもたないといったことについては、なるほどなと思いました。このことは、ちょうど『いま都市』で載っている、コンサルタントの泉さんが、大阪の水辺で社会実験としてやってみせてから、公共空間等の仕組みをつくっていったという事例があります。このように、『いま都市』は、都市をつくる仕事で悩んだ時の様々なヒントが隠されているのだなと再確認し、もう一度、深く読み進めていきたいと思いました。
また、コンサルタントの職能像については、「本当に従来のコンサルタントでは飯が食えないようになるのか?!」といった点で、もやもやした感もあり、「いま都市的コンサル」について改めて議論する場が必要だと感じました。

今回のクロストークでは、私たちが『いま、都市をつくる仕事』で議論してきたことについて、メンバー内でつめきれなかった論点を、クロストークの場でより深めていくことができたと思います。一方で、今回のクロストークだけでまだまだ議論しきれなかった点や、逆に、議論を深めることであやふやなになった点もありました。しかし、ただ考えるだけではなく、都市をつくる仕事について日々考えながら、自分なりの都市をつくる仕事の実践を積み重ねること。そして、自分なりの都市をつくる仕事を実践し、それをまた、お互いの立ち位置を確認し合いながら、様々な人と議論しあっていく。こうした議論と実践の積み重ねが、「いま、都市をつくる仕事」をより深めていく方法ではないかと思います。今後も、まち飯メンバーとは、語り合いながら、「都市をつくる仕事」を一緒につくっていけたらと思います。

大阪大学大学院工学研究科 石原凌河

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