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『桂離宮・修学院離宮・仙洞御所 庭守の技と心』評:岸田洋弥(京都大学大学院農学研究科)

桂離宮修学院離宮・仙洞御所
庭守の技と心

川荑昇作 著、仲 隆裕 監修

A5判・160頁・定価 本体2500円+税
ISBN978-4-7615-2586-6
2014-12-20

■■内容紹介■■

日本庭園の四季折々の表情は、多くの人々に賞賛されてきた。その美しさはどのような技術によって形成され、保たれているのか。40年にわたり宮廷庭園(桂離宮修学院離宮、仙洞御所)の造園技官を務めた著者が、脈々と受け継がれる技術を明らかにしながら、心を揺さぶる写真とともに、自然の美を表現した庭園の魅力に迫る。

http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/syohyo/index.htm

◎評 : 岸田洋弥 (京都大学大学院農学研究科)

 日本庭園の良さを語る際、あるいは、日本人ならではの感性を語るときに、「わびさび」という言葉が広く使われます。実際、こうした感性は私たちの心に根付いており、ふとしたときに「わびさび」的な美しさに感動する経験は誰もがもつことだろうと思います。しかし、「わびさび」とはなんだろうか、私たちはなぜ感動したのだろうか、と考えると、答えるのは難しいです。

 「桂の月」から導入されるこの本は、三つの宮廷庭園について、その美しさと技術を、40年自らの手で庭を管理してこられた川瀬さんが、自身で撮影された写真とともに語られたものです。どこをとっても、丁寧な言葉ばかりで印象深いのですが、その中でも繰り返し述べられているのが、自然の営みや、命を大切にすることです。

 例えば、「巡る季節」では、四季とともにある庭園の美しさについて、季節ごとに綴られています。始まりの季節として最初に紹介されているのは、木々が次の一年を生きるための力を蓄え始める季節である、秋です。そして、紅葉を見るときに大切なのは、「次の年もしっかりと生きていくため、植物が一つの生命を燃やしている、その瞬間の姿であるということを感じ取ること」と述べています。自然の中の命の目線にたち、庭園の美しさを捉えるこの感性こそが、本来の日本人的感性なのだと思います。

 現代に生きる私たちは、この本に綴られているような自然への思い、姿勢をもっているでしょうか。かつての日本人は自らの手を動かし、自然へ関わっていました。今では、私たちが自然に自らの手を下す機会は少なくなっています。今もつこの「わびさび」的感性は、かつての日本人の目線を引き継いできただけもので、自ら自然に関わらなくなってそれは徐々に失われているのではないかと感じます。

 この本には、自らの手で自然と関わりながら庭園を守ってきた人の目線が綴られています。その目線を通じて、自分の自然との関わり方を改めて考えることができると思います。

◎担当編集者より

 本書ができあがるまでに、3年ほどの月日を費やしました。
 宮内庁の専門職として庭園に関わってこられた川瀬先生は、ほんとうに美しい庭や樹木の姿を知っているがゆえに、現状を危惧されており、受け継がれてきた技術を伝えたい、という想いを強くもっています。
 それらを少しずつ紐解き、ご自身が長年にわたって撮影された、庭園の四季折々の表情を捉えた写真とともにまとめました。
 日本庭園を見る眼が少し変わるかもしれません。
(中木)

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