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本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた 評:乾聰一郎(奈良県立図書情報館)

本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた

礒井純充 著
四六判・184頁・定価 本体1800円+税
ISBN978-4-7615-1345-0
2015-01-01

http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/syohyo/index.htm

■■内容紹介■■ 
カフェやオフィス、個人宅から、病院にお寺、アウトドアまで、さまざまな場所にある本棚に人が集い、メッセージ付きの本を通じて自分を表現し、人と交流する、みんなでつくる図書館「まちライブラリー」。その提唱者が、まちライブラリーの誕生と広がり、個人の思いと本が織りなす交流の場の持つ無限の可能性をお伝えします。

○評 : 乾 聰一郎 (奈良県図書情報館)

 この本を読んでいて、日本には「公共」と「私(個人)」はあるが、「公」と「共」と「私」という括りが無いという話を思い出した。日本では「公」が「共」も担い、だから「私」は「公共」に対して要望し、与えられることが常態となってしまっているというのである。
 著者は、この「公共」のサービスが過剰だという。「私」は自ら何かをつくり出す存在ではなくなってしまっているというのである。だからこそ、著者は、「私」が想いと志をもって、あるいはまた、それに共感する人々とともに「共」の場をつくることにこだわるのである。組織を動かし最大公約数的に生まれてくるものではなく、個人がその手の届く範囲で、他者の協力も得ながら創り出すミクロな共生空間とでもいうべきものである。それが紆余曲折を経て、「まちライブラリー」として結実するのである。そのような著者の発想のもとになった本がもつ属性や本をめぐる人との関わり、さらには図書館という場へのまなざしは鋭く的確である。図書館をはじめとする公共や企業といった組織への痛烈な問いかけにもなっている。
 本書は、そこにいたる前史から始まる。組織人として事業を進めるなかで、自己の想いを実現しようと猛進し、達成したかに見えた先の挫折。失意のなかでの“師匠”友廣裕一さんとの出会い、そして再出発。この一連の物語は、失礼ながら一篇の青春小説を読んでいるようだ。挫折から立ち上がる姿には、爽快感と可能性への信頼感が満ちている。そして、まち塾@まちライブラリーの立ち上げから、ISまちライブラリー、そして大学と市民との協働でつくりあげたまちライブラリー@大阪府立大学をはじめ、全国に広がるまちライブラリーやマイクロライブラリーが興味深いエピソードとともに紹介されている。
 「個人」の第一歩から始まり、やがて縦横に繋がり形成されていくまちライブラリーというコミュニティに、新たな共生空間の可能性を見ることができる。そして本書は、なにより「個人」の想いをかたちにするための一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのである。

○評 : 岡本 真 (アカデミック・リソース・ガイド)

 待望と言ってもいいだろう。礒井純充さんの単著『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』が、これまた切りのいい2015年1月1日に刊行された。2014年は非図書館員による図書館テーマ本が一斉に花開くように刊行されたが(猪谷千香さんの『つながる図書館』(ちくま新書)、鎌倉幸子さんの『走れ、移動図書館』(ちくまプリマーブックス)、神代浩さんの『困ったときには図書館へ』(悠光堂)、小著『未来の図書館、はじめませんか?』(青弓社))、本書はこうした流れの締めくくりに相応しい一冊である。
 なぜか? そのポイントを、これから本書を手にする方々の楽しみを奪わない程度に数点だけ述べておこう。

1. 単に図書館を語った本ではなく、手あかのついた表現ではあるが、著者のドラマチックな半世がつづられた冒険記であること
2. その半生、特に働き出してからこれまでの間に一人の人間が本と人との交流の中で培ってきた哲学を感じられること
3. そして、著者が現在取り組んでいる「まちライブラリー」と「マイクロライブラリー」という2つの交錯する冒険を追体験できること

 本書のポイントはもちろんほかにもあるだろうが、私からすると、これらの3点は絶対に譲れないところだ。つまり、1冊ではあるが、何通りもの読み方ができ、書名からは想像できなかったかもしれないストーリーにであえるのだ。それがこの『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』の最大の魅力である。特に「ライブラリー」という言葉に惹かれて本書を手に取った方々には、タイトルだけに目を奪われず、本書のなかに広がる多様で豊饒な世界を味わい尽くしてほしい。200ページに満たない本書であるが、その中身はライブラリー本であり、コミュニティデザイン本であり、そして正しい意味でのビジネス書でもあるのだ。

○担当編集者より
 「本」と「人・まち」が交わるところには、まちづくり本編集者として興味がありました。
 本書は、近年新しい図書館のあり方が多く提案されているなかで、「個人」の想いと力を発揮できる「まちライブラリー」と「マイクロライブラリー」の取り組みを紹介しています。
 本×人の場づくりの持つ無限の可能性を感じていただければと思います。(岩崎)

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